東京スカイツリー(墨田区)の足元にあるすみだ水族館が、ツリーと同日の開業から
22日に2周年を迎えた。15秒で来館者の疑問に応える接客術「ちょっとチャット」を取り入れ、
「コミュニケーション型水族館」を実現。
飼育員らも表現力を磨き、体づくりに取り組むなど、おもてなし力のアップに努めている。
ちょっとチャットは、同館の演出を担当する元女優・ダンサーの村田香織さんが考案した
飼育員による短い解説。水槽の前で疑問を持っていそうな来館者に飼育員が作業の合間に
積極的に声をかけ、15秒前後で解説して立ち去る接客術だ。
「来館者が『あれ?』と動物たちを見て疑問を持ったときに、ほんのちょっとだけ
教えてくれたらうれしいのでは、と思って始めた」と村田さんは説明する。
来館者の気持ちを読み、コミュニケーション力が必要なことから、当初は飼育員から
「もっと長い時間がないと説明できない」「声をかけたらお客さんに驚かれた」といった
困惑の声も上がった。
しかし、村田さんは「水族館は伝えることが仕事。来館者が何を求めているのか
常に考えていれば、居心地よい空間になる」という思いから、15秒の感覚をつかむ
訓練や、話し合いを重ねて理解を求めてきた。
アンケートを取っているわけではなく、評価を受けづらい接客術だが、飼育員の意識も
確実に変化している。海獣担当の飼育員、那須彩花さん(25)は「今では15秒は短く感じない。
1回の15秒を丁寧に使うようにしている」と知識の習得や表現技術の向上に余念がない。
また、村田さんは飼育員の立ち振る舞いにも力を入れ、「動物という主役を引き立てる
名脇役になるため、来館者に見せる動作に気を配らなければ」と週2回、村田さんらが
バックヤードで、体づくりなどのクラスを開いている。
今月中旬に行われた体づくりのクラスには約15人の飼育員が参加し、ウオーキングや
走りながらハイタッチなどの運動で身のこなしを磨いた。飼育員歴15年の芦刈治将さん(37)は
「課題を与えられて、考えて体を動かす訓練をするうち、お客さんが何を求めているか
考えるようになった」と効果を語る。
芦刈さんは「ショーなどでは伝えられない『すみだ流』の伝え方がある。拍手をもらったりという
答えはないが、どんどん質を上げて居心地のよい水族館にしていきたい」と話した。
本日の担当:沼津店 山崎 (産経新聞より)