政府が国家公務員約22万人を対象に、7月から8月31日まで実施している朝型の勤務体制「ゆう活」。
残業時間が長いと指摘される国家公務員の定時退庁を促すため、安倍内閣が力を入れている
制度ですが、実際の現場からは「上司が促した日ぐらいしか取れない」「朝早く出勤してもエアコンが
利いていなくてつらい」「結局サービス残業が増える」など不満の声も少なくありません。また国会の
会期も9月下旬まで大幅延長された影響もあり、7月29日に行われた調査では午後8時までに
退庁できなかった職員は対象者の2割近くに達しています。民間企業でもフレックスタイム制を
一時導入したがうまく機能せず、元に戻したという例もあるといい、日本での時差出勤の難しさを
感じさせます。
■出勤を1~2時間早める朝方勤務
「ゆう活」は朝の出勤を通常の1~2時間早めることで、夕方早めに退庁してもらい、家庭サービスや
趣味の時間に充てるなど仕事後を有意義に過ごしてもらうねらい。総務省の統計によると、
国内雇用者のうち週60時間以上働いている人は8・8%と1割近くいます。もともと国家公務員は
残業が多いと指摘されており、長時間労働を削ることで家事や子育てに男性が参加しやすくする
側面もあります。
内閣人事局が7月1日と同29日に「ゆう活」の実施状況を調査したところ、朝型勤務を行った職員の
うち定時に退庁できたのは両日とも65%。また29日には午後8時までに退庁でなかった人は17%で、
ゆう活初日より5ポイント増えています。調査結果について有村治子女性活躍相は「引き続き国会
開会中ということもあり、業務上どうしても早く退庁できない職員の方々が一定数いた」としており、
安全保障関連法案の審議などの影響で国会が会期延長されたことが影響しているとの見方を示しました。
■「周囲が帰らないと帰りにくい」「結局家で仕事」
ある役所の40代課長級職員は「一時間早く出勤して、早めに仕事を終え、趣味の時間にあてた。
ただ朝はエアコンがまだきいていなくて暑い中では仕事の効率は正直悪い」と指摘。「上司のすすめる
日でないと取りにくい面がある」といいます。また別の職員からは「早めに出勤していても、周囲が
帰らないとやはり立ち上がりにくい」と職場全体がまだ時差出勤を導入する雰囲気づくりができていない
印象です。出勤を早めても早く帰れないのであれば労働時間はかえって増えていることになり、さらに
「結局家に仕事を持ち帰ってはサービス残業と同じ」と不満も出ています。
民間企業でも1988年から、定められた時間内なら始業と終業時間を労働者自身が決められる
「フレックスタイム制」の導入が認められましたが、大手企業では4分の1が導入しているものの、中小
零細企業ではほとんど実施されていないといわれます。30代の大手メーカー社員は「遅くまで残業した
翌日は、ゆっくり出勤するなど融通がきく面はあるが、夕方などに会議や打ち合わせなどがある場合、
勝手に帰るわけにもいかない。部署によっても使いやすさは大きく違うのでは」と話しています。
フレックスタイム制に否定的な上司の場合、取りにくいといった問題点もあり、いったん制度を始めた
ものの、結局廃止して元の勤務体制に戻した大手企業もあるといいます。
政府では長時間労働慣行を変えるため、国家公務員でもフレックスタイム制を導入する動きもあると
いいますが、日本の民間企業の有給休暇取得率は先進国の中でもまだまだ低いと指摘されています。
日本人の働き方が今後どれだけ変化していけるのか注目されます。
本日の担当:沼津店 山崎 (yahoo!ニュースより)