大手生保の明治安田生命保険が、人の遺伝子の情報を保険サービスに活用する
検討に入ることが1日、分かった。病気の発症リスクを分析し、予防に活用する取り
組みなどが想定される。ただ、遺伝子は生涯変わらない究極の個人情報。情報管
理や、遺伝子に基づく差別の懸念など倫理的な問題をはらんでおり、同社は専門
家も交えて慎重に検討する。早急な法整備も求められそうだ。
国内の主要生保で、遺伝情報の活用に本格的に踏み込むことが分かったのは初
めて。明治安田生命は1日、最先端の情報技術を駆使した金融サービスを開発す
る専門部署を設置、遺伝情報を活用したサービスについても研究を始める。専門
知識を持つ人材を中途採用するほか、遺伝情報の解析を行うベンチャー企業との
提携なども検討する見通しだ。
顧客の同意を得て遺伝情報を分析すれば、特定の病気の発症リスクを一定程度
予測できる。同社は情報の具体的な活用法について「明確にはなっていない」と
説明するが、業界関係者によると、分析結果をもとに健康管理や生活習慣の改
善方法などをアドバイスし、病気にかかるリスクを減らすサービスなどが想定され
る。発症リスクが低減すれば保険料を安くできる。健康な人が増えて保険金の支
払いが減れば、保険会社の収益改善にも貢献する。
一方、病気になりやすい遺伝子を持っていることが分かれば、保険料を普通より
高く設定したり、保険加入そのものを断ったりすることも可能になる。そうなれば、
遺伝情報を材料にして顧客を差別することになり、倫理的な問題も生じる。米国で
2008年に制定された「遺伝情報差別禁止法」は、医療保険分野で遺伝情報をも
とに加入の可否などを判断することを禁じた。ただ、生命保険は、利用者が遺伝
子検査の結果を利用して高額な保険に加入したいと考える可能性もあるため、遺
伝情報を使える。日本にはこうしたルールが無く、利用者保護の議論も進んでい
ない。
コンピューター処理技術の進歩で個人の遺伝情報を取得することが身近になり、
民間の遺伝子解析ビジネスが伸長。13年には、米国の有名女優が遺伝子検査
で乳がんのリスクを察知し、健康なうちに乳房を切除したことが話題となった。
本日の担当:沼津店 鈴木