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2014年08月06日

健全でない日本の空き家率 7割が「何もせず」

総務省が7月29日に公表した「2013年住宅・土地統計調査」によれば、13年10月1日時点での
総住宅数は6063万戸と、5年前に比べ305万戸増加した。そして、約820万戸の空き家を
我が国は抱えていることが明らかになった。
日本全体を賃貸住宅経営に例えれば、その空き家率は過去最高の13.5%と、決して健全な
状態とはいえない。この調査は5年ごとに行われるが、前回(08年)調査より空き家は63万戸増加。
今後は、本格的な世帯数減少の局面に入ることを踏まえれば、このトレンドは加速することが予想できる。

■空き家対策に乗り出す自治体が増加

こうした事態を受けて、地方はもちろん、埼玉県所沢市などの郊外ベッドタウン、さらには
東京23区の足立区においても税金を投入して空き家対策が行われ始めた。

「空き家バンク」といったデータベースをつくり、空き家が目に留まる工夫を施す、空き家を
資源と捉えて空き家活用を促進するなどの方策に着手する自治体も年々増加している。

埼玉県所沢市では10年10月、「所沢市空き家等の適正管理に関する条例」を施行、
老朽化で倒壊危険がある、景観や衛生を損なうとみられる空き家に対する市の勧告に
従わない場合には氏名公表、やがては警察等に依頼、撤去も行えるとして、ある程度の効果を得た。

■解体費用を助成する自治体も

この条例をきっかけに、全国約1700の基礎自治体のうち、200程度で空き家対策条例の制定が
相次いでいる。東京都足立区では、区の勧告に従って住宅の解体を行う場合には解体費用の9割、
上限100万円までを助成する制度を打ち出している。

ところで、空き家を放置している所有者はいったい、どういった意向を持っているのか。
コンサルティング会社の価値総合研究所(東京・千代田)が13年11月に実施した「消費者(空き家所有者、
空き家利用意向者)アンケート」によれば、空き家の所有者のうち、売却や賃貸などを検討しているのは
24.0%にすぎず、71.0%の人は特に何もせず所有しているだけということがわかる。

その中で、空き家を管理すらせず放置しているという人は12.8%。ある程度推測はできたものの、
やはり衝撃的だ。その内訳は、一戸建てが74.1%と大半で、立地は農山漁村地域や郊外より
市街地や市街地周辺のほうが60.3%と多い。

■行政が建物を解体できる法案制定

こうした事態を受けて自民党は「空き家対策推進特別措置法案」を今秋にも国会に提出する見込み。
老朽化で倒壊危険がある、景観や衛生を損なうとみられる空き家を「特定空き家」に指定、所有者に対し
建物修繕や除却、木の伐採などを指導・助言、ひいては勧告・命令できるとしている。そして命令に
従わない場合は50万円以下の過料を科し、行政が行政代執行により建物を解体することもできる。
また相続後の不動産登記が正しく行われていないケースでは所有者を探し当てることも難しかったが、
固定資産税情報を内部利用できるとすることで所有者の特定を促す。

ただ本法案の効果はあくまで未知数である。
秋田市ではすでに、命令に従わない所有者に代わり、行政が建物の撤去などを行い、その費用を
所有者に請求しているが、代執行の費用を回収できないケースが多い。12年3月に秋田県大仙市で
行われた代執行の解体費用180万円弱はまだ回収のめどは立っていないもようだ。

■税制改正も視野に

また政府は税制改正も視野に入れている。現在、住宅が立つ土地は固定資産税が6分の1に低減されて
いるため、わざわざコストを掛けて解体をし、そのうえ固定資産税が6倍に上がる、というようなことを
したがらない所有者が多いのだ。これを根本的に見直し、倒壊危険や景観阻害などの外部不経済があると
認められる空き家についてはこの軽減措置を、15年の税制によって外し、逆に所有者が自ら解体を行った
場合には、軽減措置を継続する方針だ。

このように空き家対策は徐々に進められつつあるが、こうしたいわゆる「空き家対策」だけ行うのでは不十分だ。
空き家が大量発生するという「結果」に対処するのではなく、その原因に迫る必要がある。
次回コラムでご説明したい。

不動産コンサルタント・長嶋修


本日の担当:学園通り店 杉山 (日本経済新聞より)  


Posted by 保険カンパニー at 09:43Comments(0)